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等政策を促進させる可能性は、性を中立に扱う法の方が有効であるという見方を固持したといえる。平等委員会は、しかしながら、法の実際の適用にあたっては、男性に比べて不利な立場におかれている女性の権利をまず擁護するための努力が必要であると、その基本的立場を明らかにしている(SOU 1990:41)。
10年にわたる均等法の実施にもかかわらず、スウェーデンの労働市場の就業分野はいまだに男女別に大きく分かれていることが指摘される。介護や福祉などの公共部門は圧倒的に女性によって占められ、他の分野に男性が集中するという就業パターンを呈しており、低賃金職種に女性が多く、また同じ分野においても男性が賃金の高い職務に配置されていることが明らかである。均等法の施行前の状況と80年代の平等促進結果を比較するとき、もたらされた影響は小さいというものの、労働市場における男女の状況への認識が深められ、平等促進の取り組みへの関心が高まったことは評価される。10年間において、性差別禁止に違反し労働裁判所に持ち込まれた件数は36であり、この内勝訴判決は約3分の1であった。
均等法改正にあたり、提出された提案書は「権力ならびに責任の平等分担」(Regeringens proposition 1993/94:147)と称されるように、平等問題を労使間の同意にまかせるのではなく、法ならびに平等オンブズマンの権限を一層強化することを主な内容とするものであった。提案書は、人生におけるあらゆる重要な分野において男女は同等の権利と義務、ならびに可能性を有するという、今までの平等政策の目的をあらためて確認するものの、現実は目的からまだ遠いところにあることを指摘した。しかし、いくつかの個々の分野においては肯定的な発展がみられるとし、たとえば国の機関における理事会などの決定機関への女性進出や、学校教育における女性管理職の増加などをあげている。しかし、民間などの上級管理ホストや大学教授などの設置に関しては、女性参加がきわめて遅れていることを明らかにしている。社会における政治ならびに経済の重要な問題をとり扱うさまざまな決定機関への女性進出の遅れが、権力を平等に分担していない原因になっていることが指摘されるものであった。
家庭における子どもの養育や家事分担に対する人々の認識には、一定の肯定的な変化が評価されるものの、問題はこれらの考え方や価値観の変化がどのくらい現実を変革できるかということであるとしている。以前として、低賃金労働や無報酬労働の従事率は女性に高く、女性の所得は男性のそれよりも低く、したがって総合的な経済力も弱いことが指摘される。女性の権力は政治的な分野だけではなく、経済的分野においても弱く、権力が平等に分担されないかぎり、スウェーデンの平等政策の目的が達成されないことが確認されたといえよう。これらの観点から、性差別としかいいようのない1−8%の賃金格差の克服と、重要な決定機関への女性進出(1992年最低30%、1995年40%、最終的に50%)や子育てへの男性参加などが、90年代の具体的な目標として据えられることになった。
現在10人以上を雇用する雇用主は毎年、それぞれの職種における男女の賃金格差の報告とその対策を内容とする平等計画書を提出することを義務づけられる。また、

 

 

 

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